抗がん剤は新型コロナウイルスの重症化リスクに影響しますか

抗がん剤は新型コロナウイルスの重症化リスクに影響しますか

Q.質問
抗がん剤を使っています。コロナに感染すると重症化するのでしょうか?また、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を使っているのですが、重症化するのでしょうか?

A.答え
新型コロナウイルス感染症に伴う重症化のリスクについては、がんの状態、ご本人の全身状態、治療の内容などの状況によって異なります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う重症化のリスクについては、がんの薬物療法で用いる薬剤以外に、がんの状態、ご本人の全身状態、もともとある基礎疾患(併存疾患・持病)、ほかに使用している薬剤、その他の状況によってさまざまです。

海外においてCOVID-19と診断された方のうち、がんを患っている方とがんのない方の経過や病状を比較した研究などでは、下記のような報告がなされています。

程度の違いはありますが、COVID-19の重症化と関連する因子として、がんを患っていることでリスクが上がると考えられています。ただし、「○倍リスクが高い」「○倍なりやすい」という数字で表すには、十分なデータが揃っているとはいえず、参考にしていただく程度で考えていただくとよいと思われます。

一方で、個別の治療法(手術療法・薬物療法・放射線療法など)、薬剤ごとのリスクの評価については、お一人お一人の状況に応じて考えていく必要があります。わからないことは、担当医や医療者に相談してみましょう。

大切なことは、ご自身の考えだけで治療を中断したり中止したりするのではなく、担当医や医療者、周りの人に相談してみることです。同じ悩みを抱えている人が近くにいらっしゃるかもしれません。患者会・患者支援団体、医療機関やお近くの公共機関などで、相談できる場所がありますので、調べてみるとよいでしょう。

電話での相談やオンラインでの相談なども開催していますので、お近くの患者会・患者団体へお問い合わせください。患者会については全国がん患者団体連合会が地域の患者さんの集いやオンライン勉強会などの開催状況を把握していますので、全国がん患者団体連合会ホームページ( http://zenganren.jp/ )にてお問い合わせください。

がんと診断されていない方に比べて、がんを患っている方では重症化のリスクが高くなる可能性があります。また、がんが局所にとどまっている場合にはリスクは変わらないという報告もあります。

遠隔転移(離れた臓器にがんが広がっている状態)を伴う場合には、よりリスクが高くなると考えられています。肺への転移やがん性の胸水・胸膜炎など呼吸機能に影響のある転移の場合にもリスクが高いと報告されています。

がんの種類別のリスクについては、血液・リンパのがん(白血病、悪性リンパ腫など)、肺がんでリスクが高いと報告されています。

高齢者や、臓器障害のある場合には、リスクが高いことが報告されています。具体的な臓器障害には、呼吸器の障害(慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎など)、心血管障害、糖尿病、慢性腎障害などが挙げられます。

治療の内容によるリスクの違いについても、具体的な方法、期間、治療に伴う身体への負担の程度、副作用の起こりやすさなどによって異なります。殺細胞性(細胞傷害性)の抗がん剤(細胞の増殖を抑えることによりがんを治療する薬剤)による化学療法、手術療法、放射線療法によってリスクが高くなる報告がありますが、やはりリスクも治療の方法や症状によって大きく異なります。

分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療により感染や重症化のリスクが高くなるかについては一貫したデータがなく、断定的なことはわかりません。一方で、薬剤による間質性肺炎など、がん治療薬の副作用による呼吸器障害が発症した場合にCOVID-19による肺炎が重症化しやすい可能性が指摘されています。

(参考)当事者同士の支える仕組み(患者会・患者団体情報)、手術療法・薬物療法・放射線療法などそれぞれの治療法

執筆者渡邊 清高
公開日2021年7月1日
文書番号gw0149

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