最後の時を家で迎える準備や本人の心構え

最後の時を家で迎える準備や本人の心構え

Q.質問
今は、大した病気もなく一人暮らしをしている85歳の女性です。ずっと独身で身寄りもほとんどありません。もしがんになってもあまり治療せず、苦痛だけは取り除いていただき、静かに家で過ごし、そのまま家で死ぬことを望んでいます。そのための準備や心がけはどのようなことがありますか。

A.答え
自分の中で、ある程度の覚悟と準備が必要です。ご自分のご意志がはっきりしていていいですね。まずはそれがとても大事なことだと思います。ご意志通りにことが進むかどうかは、だいたい可能だと思います。

私見ですが、準備や心がけのポイントを6つ紹介します。

1)ある程度の「覚悟」が重要です
自分の中で、ある程度の覚悟が必要です。常識や周囲の「かわいそう」などという声に惑わされることなく、自分がいいと思うことを自分の中でしっかり確認することが重要だと思います。

もしかしたら誰の見守りもなく、苦痛なく「最期の一息」を引き取ることになるかもしれません。少し不自由や寂しさがあるかもしれません。ある程度の覚悟があれば大丈夫だと思います。

2)訪問診療や在宅での看取りをしてくれる主治医とつながっておきましょう
最も大事なことの一つです。痛みや苦痛がある時にその確実な対応や治療をしてくださり、もしもの時に往診に駆けつけてくださる。そして生活を支えるサービスが必要な時にはそれをつないでくれる役割を担ってくれます。

元気な時からそういう医師*とつながっておくことが重要です。「先生、私は家がいいの。もしもの時にもお願いしますね」と冗談交じりにいつも話題にしておく方がいいでしょう。

3)自分の意志を紙に書き、身近な人々に渡しておきましょう
今の気持ちをきちんと書いて、一人でも何人にでもいいので渡しておくことが確実です。気持ちが変わったら、書き直してそれをまた差し替えてもらえばいいのです。何度変わってもOKです。ちょっとした情報で気持ちは変わるものだと思います。

4)自分の中にバリアを作らないように、自分も変わってみましょう
年齢とともに、あるいは病気とともに自分自身の考え方を修正した方がいい場合が少なくないでしょう。心を柔軟に状況に合わせて「自分自身が変われる」勇気のようなものを持ち続けることが必要かもしれません。

たとえば、「なるべく薬は使いたくない」「他人の世話にならない(ヘルパーは利用したくない)」「絶対、入院はしたくない」などと考えていらっしゃる方も少なくないようです。しかし、状況により、少しの薬、静かに力になってくれるヘルパー、短期間の入院などが体も心も楽にしてくれることがあります。

お気持ちの基本的な部分は理解しつつ、より良い方向での提案を受け入れてみる勇気のようなものも必要かなと思います。訪問看護師はぜひ受け入れてみてください。ほどよいサポーターになると思います。

5)信頼できる友人・知人・隣人を大事にしていい関係を持っておきましょう
自分なりの価値観があり周囲の人と違っていても、「違い」を強調するのではなく「違いは宝」と思って、友人・知人・隣人を理解し信頼し、心がつながるような生活を送ることが重要だと思います。理解者がいなくて孤立した状態では希望が叶う確率は下がるでしょう。

何かあった時でも、「〇〇さんは、いつもこう言っていましたよ。家で最期まで暮らしたいと」「そうよね、そうしてあげましょうよ」と、いつも気にかけてくれ、気軽に家を訪れてくれる友人・知人・隣人が宝です。

6)元気なときから訪問看護ステーションなどとつながっておくとよいでしょう
元気な時からボランティアなどで地域のサービスを行う人たちとつながっておくことがとてもいいことだと思います。

たとえば、近くで信頼できそうな「訪問看護ステーション」を訪ねて、「何かお手伝いしたいのですが…」と声をかけてみてください。忙しい仕事の訪問看護ステーションですので、「じゃあ週1回掃除をお願いします」「タオルなどの洗濯をお願いしてもいいですか」などとすぐに依頼があるかもしれません。

あるいは、「在宅ホスピスボランティア」のような役割を依頼されるかもしれません。身寄りのない方で進行したがんを患った方の買い物ボランティアやお散歩同行ボランティアなどの依頼があるかもしれません。

訪問看護ステーションなどの事業者はそう簡単にはボランティアを受け入れないかもしれませんが、「信頼」がキーワードです。

執筆者宮崎 和加子
公開日2021年7月1日
文書番号gw0001

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