グリーフケア
Q.質問
家族を失い、しばらく呆然として過ごしていましたが、最近は急に怒りがこみ上げてきたり、悲しみが押し寄せてきたりして、自分でも感情のコントロールができずつらいです。そのようななかで「グリーフケア」という言葉を聞きました。グリーフケアとは何ですか。
A.答え
大切な人やものを失った経験をした人の立ち直りを支えるケアのことです。
「グリーフ(悲嘆)」とは、「大切な人やものを失ったことによる反応」のことです。この場合の「反応」には、心理的(悲しみ、怒り、喪失感、孤独感、無力感など)、身体的(睡眠障害、食欲不振、疲労感、めまい、頭痛など)症状など、あらゆる反応が含まれます。
大切な人やものを失った人が新しい生活をつくり、それに慣れていくことを支える取り組みが「グリーフケア」です。自分らしい生活を取り戻したり、新しい日常に慣れ親しんでいったりするうえでは、グリーフケアの考え方が参考になります。
喪失による苦痛を乗り越え、充実した生活を取り戻したという方のお話を聞くと、「大切な人が自分のなかで存在し続ける、と考えるように心がけた」ということをよくおっしゃいます。
大切な人との関係性を、目に見える「身体的な存在」から、目に見えない「心の絆」として、自分のなかに刻み込んでいるようです。だから、実際に一人でもあまり寂しさを感じないそうです。
そういう話を聞けば、「思い出すとつらくなるから」と、大切な人との思い出をいつまでも封印し続けたりしなくてもよいことがわかります。
また、グリーフ(悲嘆)に十分に向き合い対処することによって、人間の命には限りがあることに改めて気づき、その現実を受け入れたうえで、大切な人々との関わりや、大切な計画を優先し、残された時間を有意義に活用しようと考えることもあるでしょう。
こうして、喪失や悲しみの気持ちから、新たな生活、人生に歩み出していくことを支えるのがグリーフケアであり、悲嘆から徐々に立ち上がっていくプロセスのことをグリーフワークと言います。
とはいえ、いつまでこの悲しみやつらさが続くのか、と考える方もいるかもしれません。
人によってさまざまですが、こうした悲しみの気持ちは一般的に月や年の単位で続くとされています。また、悲しんだり嘆いたりしながらも、実生活が進んでいくなかで、時間の経過を経て、次第に悲しみの感情や生活そのものが変化していくことも少なくありません。
最近は、グリーフケアに積極的に取り組む医療機関や支援団体が増えています。お住まいの地域のがん診療連携拠点病院等に設置されている「がん相談支援センター」に問い合わせてみるのもよいでしょう。
また、遺族会などでも熱心にグリーフケアに取り組んでいるところがありますので、調べてみるのもよいかもしれません。あるいは、誰かと一緒にいるよりも一人でじっくり向き合ったほうが自分には合っていると思えば、もちろんそれでもよいのです。
グリーフケアにもいろいろな形があり、これが正しいと言うものはありません。
なお、心痛や苦悩が高じて「消えてしまいたい」「何もかも嫌になった」といった否定的な気持ちをもってしまうこともあるかもしれません。
こんなときには、特に無理は禁物です。早目に身近な人や医療関係者に相談するようにしてください。
執筆者 | 渡邊 清高 |
公開日 | 2021年7月1日 |
文書番号 | gw0143 |
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