お手洗いに一人で行けなくなったとき

お手洗いに一人で行けなくなったとき

Q.質問
本人がお手洗いに一人で行けなくなったのですが、家族の手を借りたくないといっています。家族としてどうしたらいいでしょうか?
A.答え
がんの療養中に、これまで独力で行えていた排泄行為を、長期間まわりの人の介助に委ねなくてはならなくなることがあります。また病状の変化に伴う体力低下から、短期的にさまざまな困難が起こることがあります。排泄は極めてデリケートな、プライベートなことであり、他の人に見られること自体が大きなストレスになります。しかし、排泄というのは生命維持に必要不可欠な生理行為であり、また開放感と爽快感も伴う、人間の基本的欲求ともいえます。

家での療養では、家族が排泄の介護にあたる場合が多くなります。がんという病気を家族で支えていこうというご家族も多いと思います。その場合、長年共に暮らしてきた家族といえども、排泄物を目の当たりにすることは抵抗があるでしょう。しかし排泄の介護に家族が不快な態度や言動を表すと、本人は羞恥心を一層強く感じてしまうばかりか、排泄という行為自体を罪に感じてしまい、心を閉ざしてしまう場合もあります。仮に排泄を失敗しても咎めることがあってはいけません。ますます自信をなくし、人間不信に陥ってしまうこともあります。ご本人の自尊心を尊重したケアを心がけましょう。

支援するためには、排泄がどの程度できるかの正確な評価をもとに、丁寧な対応が必須です。下記の表に評価の項目をあげました。本人・家族と、介護の専門家を含めて、本人がどの程度できるか、家族がどの程度支援できるか、訪問看護や訪問介護などの公的支援がどの程度必要か、具体的に検討されることをお勧めします。

助けとなるのが、近年、排尿困難や、便秘と下痢の薬などによる排便コントロールの治療法が大きく進歩していることです。トイレの設備とオムツ、下着も大きく進歩しています。下記の「排泄能力のチェックポイント」の項目を参照し、医師や看護師・介護職の方などとよく相談して介護の方法を選ぶことが大事です。



表 排泄能力のチェックポイント
以下の動作が問題なく行えるかどうか、ご本人、ご家族、専門家(主治医、訪問看護・介護の方、ケアマネジャーなど)と検討し、どの段階でどのくらいの手助けが必要なのかを考えましょう。
尿意、便意があるか
トイレまで我慢できるか
トイレを認識できるか
起き上がってトイレまで行けるか
衣類の着脱は可能か
トイレに座れるか
排尿はできるか。回数、量、勢いなど。
排便はできるか
後始末はできるか

執筆者児玉 龍彦
公開日2022年5月25日
文書番号gw0185

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