在宅療養でのがんによる痛みの対応について

在宅療養でのがんによる痛みの対応について

Q.質問
がんによる痛みが出た場合、痛みを取り除く方法はありますか。在宅の場合どのように対処してもらえますか。

A.答え
在宅療養においても、適切に対処することで痛みを軽減することができます。

心配されている痛みは「がん性疼痛(とうつう)」と呼ばれるもので、がんを患われた方の70%が経験しますが、適切な鎮痛薬の使用によって、その80%は軽減できるとされています。在宅支援チームは痛みの緩和にも積極的に取り組んでいますから、安心して相談してください。

がんの痛みに対する薬物療法の基本的な考え方として、痛みの強さを適切に評価して積極的に医療用麻薬を含む鎮痛薬を使い分ける方法が広く普及してきています。この考え方に基づいたがんの痛みの治療は、日本をはじめ多くの国で広く取り入れられています。

また、がんの痛みを和らげる治療やケアは年々進歩しており、さまざまな手段を使って痛みをコントロールすることが可能になっています。痛みを我慢することはQOL(生活の質・人生の質)の低下につながります。多少の痛みは仕方がないと我慢したり遠慮したりせずに、医療スタッフに伝えましょう

痛みの強さや感覚は他人にはわかりづらいものです。うまく伝えるコツは、痛みの程度を「0(まったくない)~10(考えうる最大の痛み)」の数値で表すとしたらいくつくらいかで表現したり、痛みによる具体的な生活上の影響を挙げて話すことです。

たとえば、痛みでよく眠れない、外出を控えている、うずくまっている時間が多くなった、頓服(とんぷく)の薬をのむ回数が増えた、などについて伝えましょう。

なお、なかには多少の痛みが残っているほうが感覚が保たれる、活動している実感があるとおっしゃる方もいます。その人が望む痛みの緩和の程度はさまざまですから、ご家族や在宅支援チームのスタッフは、そのことを理解し尊重することも大切です。

また、薬物療法以外にも、心身のリラックスを図ったり、姿勢(体位)を工夫することで痛みが和らぐこともあります。好きな音楽を聴いたり、アロマセラピーや呼吸法、マッサージなど、ご本人が心地よいと感じるものを見つけられるとよいですね。

姿勢(体位)の工夫については、在宅支援チームの看護師や理学療法士から教えてもらうとよいでしょう。

なお、がんの痛みは、単に病状の問題だけでなく、精神的・社会的な問題、スピリチュアルな問題(死への恐怖や人生の意味への問いなど)によって増強されることもあります。そのような場合は、ご本人の気持ちに寄り添い、ゆっくり話を聴くことも、時に必要です。

また精神的な不安や悩みについて、がん患者さんの心のケアを専門に対応している精神腫瘍医、精神神経科医、臨床心理士などの支援を受けることもできます。


執筆者渡邊 清高
公開日2021年7月1日
文書番号gw0121

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