食べ物を飲み込みにくい方に調理される「嚥下調整食」とは?
Q.質問
がんで入院していた家族が帰ってくるのですが、入院中は、手術のあと「嚥下調整食」という飲み込みやすい食事をしていたと聞きました。「嚥下調整食」には1、2、3と段階があると聞きましたがどういうものですか?
A.答え
がんの手術や、抗がん剤治療などの影響で体力が低下した場合に、ものを噛む力が落ち、飲み込みにくくなる場合があります。手術や治療に伴う一過性の場合は、それに合わせて飲み込みやすい食事にします。回復したらなるべく普通の食事に近づけていきます。脳卒中の後遺症でもものが飲み込みにくくなる方がおられます。一方、認知症が進行したり、高齢の方で歳をとるにつれて、次第に飲み込みの難しさが増していく場合があります。
こうしたことに合わせて、病院や、介護施設では、学会の「嚥下調整食分類」にしたがって、食事の段階を表すことが多くなっています(文末の説明を見てください)。
どのような段階の「嚥下調整食」がいいかは、担当医や、歯科医、看護、介護の方ともよく相談されるのが大事です。様子が変わるにつれ基準も変わるからです。
嚥下調整食の分類では、食事の量や成分は決めておらず、誤嚥や窒息を避け、飲み込みやすい食事の形を示したものです。次の点がポイントです。
第一に、食べ物の大きさ、第二に、食べ物の硬さです。歯がなくても舌と口蓋で潰せるか、それより硬くても歯茎で潰せるかなど細かな配慮が入ります。
第三に、ごっくんと 飲み込める塊として飲み込みやすくなっていることです。
こうしたものを組み合わせて、飲み込みやすい方から、普通の食事に近づけていくよう、食事を食べる様子を見ながら変えていきます。
コード0は「訓練食」という均質で柔らかさに注意したゼリーか、とろみをつけた液体で、飲み込めるか様子を見ます。最初に食事が食べられるかを見るときなどに使います。
コード1は均質で硬さに注意したゼリー、プリン、ムース状のもの。食べる前にすでに適切な食物の塊になっていてそのまま飲み込めるものです。
コード2は、ピューレ、ペースト、ミキサー食で,スプーンですくって食べることが可能なもの,口の中で簡単にまとまって誤嚥しにくいものです。
コード3は、形はあるが柔らかくて、舌と口蓋で押しつぶしやすく、食物の塊として飲み込みやすいものです。
コード4は、箸やスプーンで切れる柔らかさの食材で、歯がなくても、歯茎で押しつぶせる(咀嚼できる)ものです。舌と口蓋では押しつぶしにくい程度の硬さの固形物も含みます。
嚥下調整食のコードは0から4まであり、付記の学会の早見表をもとに、いろいろな見本の料理も報告されています。
一方、液体を飲むとむせやすい方もいらっしゃいます。これは、液体を早く飲み込むと、気道の蓋(喉頭蓋)が反射で閉じる前に、液体が喉頭・気道に入り込んでしまうことが原因の可能性があります。また、個体と液体が別々になりやすいと、塊としての飲み込めなくなります。薬と水を一緒に飲んでも、水だけ飲んでしまい、薬だけ残って飲み込めないことがあります。こうした場合には、水のねばりを増やす「とろみ」をつけることが行われます。
「嚥下調整食」が、固形物の硬さや柔らかさ、大きさに注意するのに対し、「とろみ」は液体の粘りに留意することで、まとまりやすく、塊としてゆっくり流れることを目的にしています。
(付記)とろみの程度や、嚥下の調整の食事について詳しく学びたい方は、
「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」に詳しく書かれています。
専門家向けですので一般の方が読まれる場合には、注意深く見ていただく必要があります。
執筆者 | 児玉 龍彦 |
公開日 | 2022年3月25日 |
文書番号 | gw0183 |
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