がんのゲノム医療とは?

がんのゲノム医療とは?

Q.質問
遺伝子検査によってがんの治療法を選択する「ゲノム医療」が始まったと聞きました。どんなものですか?
A.答え
21世紀になり、人の約2万個の遺伝子を含む「ゲノム」の配列が解読できるようになってきました。がんの「ゲノム医療」というのは、がんの組織の一部や細胞を採取してその「ゲノム」の配列を読んで、どんな変化(「変異」「バリアント」といわれることもあります)が起こっているかを調べ、得られた情報をもとに、一人ひとりのがんの病状や性質に適した、有効性が高く負担の軽い医療を実施することを指します。

我が国でも2018年からがんに関係する数百種類の遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査システムが承認されたり、「再発」(→再発と遺伝子パネル検査)や「転移」(→転移と遺伝子パネル検査)がある進行がんに対して新しい理論をもとに薬が開発され承認されたり(→うつ手がないと言われた時の遺伝子パネル検査)、新しい薬の臨床試験や治験が始まったり(→治験や臨床試験に参加したい)しています。

「緩和ケア」に関してもとらえ方が広がり、がんと診断された時からがんに伴う心と体のつらさを和らげることを目指すようになっています。もちろん、ゲノム医療との併用も検討されます(→緩和ケアを受けながらゲノム医療はできますか?)。がんのゲノム医療の開始とともに、全国でゲノム医療に関する相談支援の窓口が整備され(→ゲノム医療の相談はどこでできますか? )、遺伝子パネル検査を受けることができる地域の医療機関(がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院・がんゲノム医療連携病院)が指定され(→ゲノム医療の拠点病院・連携病院とは?)、拠点病院ではさまざまな分野の専門家が集まって最適な治療方針を検討、推進するエキスパートパネル(→がんゲノム医療のエキスパートパネルとは?)が開催されています。

遺伝子パネル検査は費用が高い検査ですが、公的医療保険が適用される場合(→遺伝子パネル検査の費用:公的医療保険が適用される場合)と、自己負担で対応する場合があります。検査に使用する組織や細胞(サンプル)は手術や生検で採取されたものを用いる場合(→ゲノム検査を受けるのには手術か生検が必要?)と、血液中の細胞を用いる場合(→血液で遺伝子パネル検査ができる?)があります。現状の公的医療保険の仕組みでは、保険が適応される検査は1回に限られ、標準治療(効果が科学的に証明され、実施が推奨されている治療)が終了したか、終了見込みであること、難治がんや希少がんなどであることなどの要件がありますので(→遺伝子パネル検査は1回きり?)、いつ実施するか判断することも必要になります(→パネル検査はいつ受けるのがいい?)。一方、特定の薬について、有効性を検討するため一つまたは比較的少数の遺伝子の変異やバリアントを調べるコンパニオン検査・診断(→がん治療薬のコンパニオン検査・診断)というものもあります。

制度が整備されてきて、すでに4万人以上の方が遺伝子パネル検査を受けており、ゲノム医療に関する情報も集まり始めています(2022年10月時点)。

執筆者児玉 龍彦
公開日2023年1月1日
文書番号gw0222

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