再発と遺伝子パネル検査
Q.質問
がんが見つかり、手術を受けました。その後、再発防止のために抗がん剤による化学療法を予定通り6回終了しました。治療は辛く、苦しいものでした。それでも再発したのですから、つらい治療は繰り返したくありません。遺伝子検査で、もっと楽な薬による別の治療法が見つかる可能性はないのでしょうか。 (60代女性)
A.答え
これまでの薬が効かなくて「再発」した可能性があるとのこと、ご心配なことと思います。
こうした方が「遺伝子パネル検査」(→がんのゲノム医療とは?)を受け、数百の遺伝子の変異をまとめて検査した場合、遺伝子の変化が検出され、遺伝子変異に応じた薬を選ぶことができれば、効果が期待できる新たな治療を受けられる可能性があります。
しかしながら、現状では、遺伝子パネル検査を受けた方のうち、この検査の結果をもとに何らかの治療薬を用いることができた方の割合は7%と報告されており、決して多いとは言えないという状況です(2022年7月時点)。また、こうした治療でも根治は難しく、当面のがんの進行を抑えるとことが目標となります。治療によってがんが縮小したり症状が軽減したりするなどの効果が期待できる一方、新しい治療薬でも副作用が起こることで治療が難しい場合もあり、副作用を軽減する治療を併用しながら継続していきます。このように、遺伝子パネル検査を実施しても治療に結びつく情報が得られない場合も多く、見つかって治療ができた場合であっても必ずしも期待された効果が得られないこともあります。
現在、世界中でがんにおける遺伝子の変異と薬剤の研究開発が活発に行われています。臨床試験や治験の段階にあるがんの薬もあり、遺伝子パネル検査で得られた情報をもとに、参加できる可能性のある臨床試験や治験に関する説明がなされることがあります。その場合には、臨床試験や治験の目的、期待できる効果や起こる可能性のある副作用、実際の治療までの流れ、費用負担などについて、担当医からよく説明を受けて、参加するかどうか判断するようにしましょう。
遺伝子パネル検査は費用が56万円と高いですが、条件を満たせば公的医療保険(負担割合に応じて、1~3割)が適用されます(→遺伝子パネル検査の費用:公的医療保険が適用される場合)。
また、特定の薬について、有効性を検討するため一つまたは比較的少数の遺伝子の変異やバリアントを調べるコンパニオン検査・診断(→がん治療薬のコンパニオン検査・診断)というものもあります。
主治医の方に相談されるか、お住まいのがん相談支援センターで相談してみましょう。がんゲノム医療について受けられる施設や診療科の受診について情報を得られると思います(→ゲノム医療の相談はどこでできますか?)。
執筆者 | 児玉 龍彦 |
公開日 | 2023年1月1日 |
文書番号 | gw0223 |
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