むせるのを防ぐ「とろみ」とは?
Q.質問
がんで入院中の親が帰宅するので食事を手伝うのですが、むせるといけないので「とろみ」をつけてください、と言われました。どのようにすればいいのでしょう?
A.答え
全身の筋力低下に伴い飲み込みに関連する筋力の低下が起き、ものを飲み込みにくくなることがあります。食事を取るとむせることが多い場合は、誤嚥の可能性があり、注意が必要です。そういう時に、液体には、とろみ剤を加えて「とろみ」をつけることが有効なことがあります。「とろみ」をつけるとは、あんかけの あんのようなイメージで、液体の粘りを増すことを指します。
「とろみ」をつけるのには2つの狙いがあります。一つには「とろみ」があるとゆっくり喉に移動します。健康な人でも慌てて飲み物を飲むと、気道を蓋(喉頭蓋)で閉じる前に、液体が咽頭から喉頭・気管に入ってしまい むせりやすくなります。「とろみ」がつくと口の中でまとまってかたまりとしてゆっくり、ごっくんと 飲み込むので誤嚥しにくくなります。
もう一つは、固体のものと液体のものが混ざっていて、固体がうまく喉から食道に送り込めずに、液体だけ飲んでしまい、固体の成分が喉にひっかかって残ってしまう場合です。液体に「とろみ」があると固体のものがばらつかないでとろみの液体がまとめてくれるので飲み込みやすくなります。食事ではないですが、薬が飲み込みにくい時にも「とろみ」をつけたものと一緒に飲み込むと、咽頭に残らず ごっくんと飲み込みやすい場合があります。
とろみをつける場合は、ご本人やご家族が、担当医または看護師や言語聴覚士、栄養士、歯科医師などと良く相談して、飲みやすい「とろみ」の濃さ、薄さを考えましょう。それをもとに、実際の日常で、ご本人の様子に合わせていきましょう。とろみの度合いは次のような段階のものが用いられます。
「薄いとろみ」としてはスプーンを傾けるとスッと流れ落ちる、フォークの歯の間から素早く流れる程度とされます。
「中間のとろみ」としてはスプーンを傾けてトロトロ落ちる、フォークの歯の間からゆっくりと流れる程度です。
「濃いとろみ」としてはスプーンを傾けても形が保たれ流れにくい、フォークの歯の間から流れでない程度と、一般的には表現されています。
がんの病状や、手術や放射線、抗がん剤などの治療によっても、体力も変わり、気力も変わります。ものを飲み込む力も変化します。ご家族の方や介護される方が、食事のときの様子を注意深く見てあげることも大事です。「とろみ」も一度つけたらつけっぱなしでなく、様子を見て減らせる場合もあります。専門家とも相談しながら、食事を楽しんでいただくことは、家での療養にとても大事です。
(付記)とろみの程度や、嚥下の調整の食事について詳しく学びたい方は、
「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」に詳しく書かれています。
専門家向けですので一般の方が読まれる場合には、注意深く見ていただく必要があります。
執筆者 | 児玉 龍彦 |
公開日 | 2022年3月25日 |
文書番号 | gw0182 |
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