気管カニューレとがんの在宅療養:どのように準備すればいいですか?

気管カニューレとがんの在宅療養:どのように準備すればいいですか?

Q.質問
夫ががん治療で入院中に気管切開をして気管カニューレ(管)をつけていますが、退院して家へ戻れる可能性はあるのですか?
A.答え
<気管切開と気管カニューレ>
呼吸困難の対応のため、気管を切開しカニューレという管を入れて、気道を確保する場合があります。
のどや首のがん手術で呼吸が難しくなる可能性がある時は、気管を切開して一過性に首から気管に管を入れる場合があります。通常は4-5日で特殊な管に変え、声が出せるようになり、管を抜くことが可能になります。その後1週間から数週間で切開したところを閉じます。基本的には気管切開はなるべく早く閉じる方向で治療が行われ、閉じてから退院することを目指します。

<がんでの切除や、誤嚥のため長期に入れる場合もある>
しかし、咽頭や喉頭にがんがあったり、誤嚥を繰り返して気管に異物が入ったりしてしまう場合、呼吸ができるように気管を首のある部分に縫い付け、穴を長期または終生にわたり使う場合もあります。また進行性の神経疾患や慢性の障がいでも呼吸の管理が必要なため、気管を切開して気管カニューレ(管)を長期または終生使う場合があります。

<落ち着いている場合には家族が世話して家で療養できることもある。それとともに介護老人保険施設、緩和ケア病棟での療養の可能性もある>
慢性の疾患で症状が落ち着いていて、在宅療養・訪問看護のサポート体制がある場合は、在宅の療養や呼吸ケアも行われることが増えています。がんの場合は、呼吸困難の程度や酸素が保てるか、たんが自力で出せるか、誤嚥があるか、感染などが起こらないか、声を出せるかにより、管理の仕方が大きく変わってきます。主治医や訪問診療の医師とよく相談してください。

退院後に、自宅で療養される場合には、症状が落ち着いていて、カニューレの管理を、入院中に主治医からよく教わっていて家族の方が世話できることが重要になります。
一般的には、がんの療養では、病状の進行で呼吸困難が急に起きる可能性も多く、自宅療養ではたんの吸引や気管カニューレの清潔な管理の問題も含めて、医師・看護師・介護師も参加した慎重な準備が必要です。一般の病院からまず、呼吸ケアのできる介護老人保健施設、または緩和ケアのできる入院施設へ移る場合もあります。

<気管カニューレでのたんの吸引>
たんが自力で排出できない場合は、吸引する必要があります。たんの吸引は「医療的ケア」とされ、法律上は医師と看護師が主に行うことになっています。たんが詰まると緊急の対応が必要になります。

様子が落ち着いついていれば、入院中に家族の方がよく世話の仕方を教わって、管理されることも可能です。それに加えて、介護福祉士も、講義・実習・実地研修をおさめ認定された場合、医師と訪問看護師の指導のもとに、吸引を行うことができるようになりました。慢性疾患では医師、看護師の指導のもと、家で家族が吸引をおこなう場合があります。しかし、がんの在宅療養では、病状の変化する場合があり急変時の連絡体制も必要で、実際には24時間の支援体制がないと難しい場合も多いです。

<気管カニューレを使って誤嚥に対応することが必要となる場合>
誤嚥がある場合は、管の周りにすき間ができ、気管に入りこまないようにカフという風船を膨らませ、誤嚥したものが気管に入り込まないように防ぎます。カフの管理は主治医及び看護師が行います。

家でのがんの療養で、誤嚥しやすい方の気管カニューレでの対応はかなり難しい場合も多いです。家族の方で対応が難しい場合は、病院から医療的ケアのできる介護老人保健施設へ移られる選択もあります。どうしても家へ戻りたい方の場合は、主治医とご相談の上、準備と支援の体制が必要で難しい場合も多いのが現状です。

執筆者児玉 龍彦
公開日2023年11月13日
文書番号gw0297

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