がん患者の自宅ケア:たん吸引の方法とは?
Q.質問
がんの療養で体力が落ち、たんが自分で出せなくなり、自宅でたんの吸引をしなくてはならない場合の注意を教えてください。
A.答え
たんが十分に出せなくなった方には、口や鼻から管を入れて、たんを吸い出すことが行われます。まず「たんがからむがん患者の自宅でまずできる対応策」に書かれているたんを出しやすくするケアをし、それでもたんや咳が続く場合、主治医に相談してください。
吸引は刺激性もあり、操作によって呼吸が困難になる危険性もあります。症状が落ち着いていて、家族の方がお世話をされる場合は、主治医または看護の方からよく教わって家での療養の手助けをします。
本人または家族の方以外のたんの吸引は「医療的ケア」と定義され、医師や看護師などの医療従事者が行うこととなっています。また近年、研修を受け、実習・実地研修を経た介護福祉士や養護教員についても、介護施設や養護学校で吸引を行うことができるようになりました。また一定の条件を満たす場合は、家族も吸引を行うことができるとされています。
たんがからむと呼吸が危うくなることがあり、特にがんの療養中のように症状が急に変化する可能性が高い時は、24時間体制が必要な場合もあります。訪問診療医、訪問看護ステーションなどで対応してくれる場合もありますので、相談してみてください。
一方で自宅でのがんの療養において、たんの吸引を日常的に繰り返す必要がある場合は、主治医の指導のもとに、家族が世話をする場合が多いです。しかし家族の負担が大きくなりすぎないように、看護師・介護福祉士も加わり、本人や家族の意向も尊重し、連携してやり方を決めることが必要になります。24時間体制になることもあり、よく相談して対応・準備することが重要です。
なおすでに気管カニューレをつけている方については次の2項目も参照してください。
また誤嚥の多い場合には、特に注意が必要です。
たんの吸引が必要となる場合については、次に挙げる注意点も参考にしてください。がんの療養中で様子が変化しやすい場合は、いろいろな懸念点があります。症状が落ち着いている場合は家での療養を家族の世話で行う場合もありますが、症状が変化する可能性のある場合は、医療ケア付きの介護施設や緩和ケアの病棟等の利用の可能性も含め、検討が必要となることもあります。
<口からの吸引と鼻からの吸引>
たんの吸引には口からの場合と鼻からの場合があり、それぞれ安全性の注意があります。
口の中・鼻の中・咽頭・気道を傷つけ、刺激して咳を誘発したり、呼吸困難を起こす場合もあります。またカテーテルが口蓋垂(いわゆる「のどちんこ」)を刺激すると、吐き気を引き起こすことがあります。食後に口から吸引すると嘔吐を促すことがありますので、なるべく避けるか、または十分注意の上行います。
鼻から吸引する場合は奥が見えず、出血しやすい部位もあるので、入れ方について研修を受け、無理して行わないよう注意してください。
一般に吸引は喉までが限界のことが多く、気管までは届かないことが多いです。無理に全てのたんを取ろうとしないのが大事です
<ケアにあたる方は本人と家族の気持ちを考えて>
自宅でたんの吸引が必要な状態は、ご本人は息苦しく不安も多い上に、周りの人に呼吸を頼らねばならない気持ちも複雑なものがあるでしょう。体力が弱りご本人との意思疎通が難しい場合もあり、また吸引してもスッキリしないことも多くあります。まずご本人がたんの不快感をどう感じているか、何を希望しどの程度協力できるかを理解することが大切です。
たんの吸引は一定の時間ごとに行うのではなく、息苦しさや刺激されての咳き込み、ご本人の不快感などによって行う場合があります。医師や看護師とも相談し、やりすぎにならない配慮も必要です。
家族もご本人と同じく不安を感じることが多く、ケアにあたる方は、酸素飽和度なども参考にしながら、慎重に専門家と相談しながら進めることが大事です。
<感染への注意が必要>
自宅でたんの吸引を行うには、消耗品をきちんと清潔に入手できるよう、薬局などとの相談も必要です。気道に病原菌を持ち込まないようカテーテルの清潔な操作や、また使用後のカテーテルから菌などを広げないようすることが必要です。主治医の指示を受け、看護・介護の連携で実施方法を決めます。
<たんの吸引は時間を限って>
たんの吸引を行うと刺激で呼吸機能が落ちることがあり、時間をかけると酸素濃度が下がったりします。時間を区切って、長く吸引しないことが大事です。慢性の病気の時は、医師や看護師の指導のもとに家族や介護福祉士の方が吸引を行う場合もありますが、家でのがん療養の場合は、吸引で急に状態が変化することもあります。パルスオキシメーターで酸素飽和度を見ながら行うと低酸素になっていないかどうかチェックできます。吸引した時の様子をよく見て、効果などを記録しておくことも役に立ちます。
執筆者 | 児玉 龍彦 |
公開日 | 2023年11月13日 |
文書番号 | gw0300 |
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