がん治療中の咳き込み:家でのケアと対処法

がん治療中の咳き込み:家でのケアと対処法

Q.質問
家でがんの療養中の父が咳き込むことが多く、苦しそうです。どうケアしてあげたら楽になるでしょうか?
A.答え
咳は、気道が刺激されて勝手に起こる反射による場合と、意識して出す場合があります。刺激からイガイガ感が気になって繰り返すこともあります。咳のケアには、原因別の療養と、また空気をきれいにしてホコリや刺激物を避け温度や湿度を保ち、たんを出やすくし咳を抑える一般的なものがあります。

<咳き込む原因に応じた対応>
咳の原因で多いのは、たんが溜まってからむ場合です。その場合は原因の治療に加え、たんのケアが役に立ちます。
がんの療養中の方で、咳がひどい上に呼吸も苦しくなる場合は、肺炎や喘息や間質性肺炎など命に関わる場合もあり、きちんと主治医に相談することが大事です。
がんで胸水が溜まることが刺激となり咳がひどくなったり、がんがリンパ節に転移し気管支を刺激することもあります。これらの場合は対応策が異なるので、主治医によく相談してください。
またがんの治療中は、感染症にかかりやすくなることがあります。そのおそれのある場合は、咳とたんの対象療法と共に、主治医に相談して病原菌への対応が必要です。ウイルス感染には有効な抗菌薬や抗ウイルス薬が少ないため、症状を和らげる治療が中心になることもあります。

<肺にがんができると、たんがなくても咳き込むことがある>
一方たんがあまり出なくても、がんが気管や気管支を圧迫したり、神経を刺激したりすることで、咳がしつこく続く場合があります。こうした場合は、咳を薬で抑えることが必要になります。主治医と相談して、原因に合わせて咳を抑える薬を処方してもらうことができます。咳に対する薬剤には麻薬系の薬と非麻薬系のものがあり、市販のコデインを含む薬は弱い麻薬系の薬と考えていいでしょう。咳がひどい場合にはオピオイド系を処方される場合もあります。この場合は主治医・看護師・薬剤師とよく相談して、管理を丁寧に行うのが大事です。

<誤嚥や異物を飲み込みやすくて咳が多い場合は、誤嚥の対応が必要>
異物を誤嚥した場合も、それを排出しようとして咳が起こります。胃や食道のがんの手術や、逆流が起こりやすい場合、体力が落ちて嚥下ができにくくなった場合でも、咳が起こります。誤嚥が疑われる場合は、誤嚥の予防について主治医や看護師と相談してください。

<咳の原因が喘息であることも多い>
喘息では気管支粘膜のアレルギー反応を抑えるために、吸入ステロイド薬と症状を和らげる気管支拡張薬の併用治療を行います。
アレルギー性鼻炎では抗アレルギー薬、胃食道逆流症では胃酸の分泌を抑える薬を使用します。降圧薬の副作用が咳の原因と考えられる場合は、薬の種類を変更します。原因が一つとは限らないので、いくつかの治療を同時に併用することもあります。

このようにがんの療養中には、咳の原因は多様なものがあります。咳がひどい場合や繰り返す場合は、呼吸器の専門医にかかり原因を考えた治療を受けることも有効です。

執筆者児玉 龍彦
公開日2023年11月13日
文書番号gw0304

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