がん治療の副作用「骨髄抑制」とは?:症状、検査、その対策

がん治療の副作用「骨髄抑制」とは?:症状、検査、その対策

Q.質問
担当医から、私が使用する抗がん剤には「骨髄抑制(こつずいよくせい)」という副作用があると聞きました。「骨髄抑制」という言葉を聞いても、どんな副作用なのか想像がつかないため、とても不安です。
A.答え
「骨髄抑制」とは、血液を作る働きが低下する副作用です。貧血を起こしやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりします。骨髄抑制が起こっているかどうかは自覚できないため、検査で確認する必要があります。

私たちの血液は骨の中の骨髄と呼ばれる部分で作られていますが、抗がん剤を使用すると、骨髄の血液細胞を作る働きが弱まることがあります。これを「骨髄抑制」といいます。

血液の主な成分として、赤血球、白血球、血小板があります。赤血球には体中に酸素を運ぶ役割があり、白血球にはウイルスや病原菌から体を守る免疫の役割があります。血小板にはけがをしたときなどに出血を止める役割などがあります。

骨髄抑制によって血液を作る働きが低下すると、赤血球や白血球、血小板が少なくなります。赤血球が減少すれば貧血が起こりやすくなり、白血球が減少すれば感染症にかかりやすくなります。血小板が減少すれば出血しやすくなり、血が止まりにくくなります。

骨髄抑制は、主に「細胞傷害性抗がん剤」という種類の抗がん剤を使用したり、骨髄を含む骨に放射線療法を受けたりすることで起こることがある副作用です。個人差はありますが、治療を始めてから1週間ほど経過してから起こり始め、その後、日数が経過するにつれて徐々に回復します。倦怠感(だるさ)、血が止まりにくいなどの症状がある場合もありますが、多くの場合、骨髄抑制には自覚症状がありません。そのため、骨髄抑制が起こっているかどうかを知るには、血液検査を受ける必要があります。

この副作用は治療中常に起こっているわけではなく、波があります。治療の種類や回数、治療を受けた後の期間などによってさまざまです。血液検査で赤血球や白血球、血小板が減少しているかどうか調べ、そのときの状態に応じて対策をとることで、副作用の影響を抑えて普段に近い生活を続けることが可能です。

たとえば、白血球が減少しているときには感染症にかかりやすくなったり、感染症を起こして発熱すると急速に重症化するおそれがあるので、感染予防が大切になります。外出するときはマスクを着用し、人混みを避けることが大切です。帰宅したら、しっかり石けんを用いた手洗いや速乾式アルコール液で手や指を消毒しましょう。自宅で過ごすときでも、トイレ後やペットと触れ合った後には手を洗いましょう。このように体を清潔に保つことが大切です。

インフルエンザが流行する時期は、ご本人はもちろん、同居するご家族のみなさんも予防接種を受けましょう。口の中を清潔に保つために、うがいや歯磨きを行いましょう。虫歯や歯周炎があれば、治療の前に治しておくことも大事です。

血小板が減少しているときは、ちょっとしたことでも出血しやすくなっていますので、転んだり、体をぶつけたりしないように気を付けましょう。また、口の中も出血しやすくなっていますので、歯を磨くときは軟らかい歯ブラシを使うとよいでしょう。口の中を清潔に保つことは感染予防にも効果があります。

骨髄抑制を完全に予防できるわけではありませんが、がん治療の進歩に合わせて、副作用に対する対処法も進歩してきています。わからないことや不安なことがあれば、担当医や看護師、薬剤師に相談し、どのようなやり方で副作用に対処すれば普段に近い生活が続けられるかを検討していきましょう。

執筆者渡邊 清高
公開日2023年6月5日
文書番号gw0260

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