がんの薬物療法の副作用:細胞傷害性抗がん剤、ホルモン剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬

がんの薬物療法の副作用:細胞傷害性抗がん剤、ホルモン剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬

Q.質問
薬物療法を主体にがんの治療を始めることになりました。どんな副作用があるのか、今から心配です。
A.答え
がん治療薬による主な副作用は、その薬の作用のしくみによって大きく変わります。

がんの治療薬は、薬の作用メカニズムによって、大きく4つに分けることができます。これらがん治療薬の作用は、がん細胞を攻撃して治療効果を得るためには必要なものですが、一方でその作用によって、患者さんにとってつらい症状や臓器への障害がもたらされてしまうことがあります。このように、薬の作用によって現れる望ましい効果(病気への効果)のことを「主作用」、望ましくない症状や障害のことを「副作用」と呼んでいます。

(1)細胞傷害性抗がん剤
従来から用いられてきた抗がん剤です。主な副作用としては、吐き気・嘔吐、脱毛、骨髄抑制(白血球などの減少)、口内炎、下痢・便秘などがあります。

(2)ホルモン剤
ホルモンの影響を受けて増殖するがん(乳がん、前立腺がんなど)に用いられる薬剤で、ホルモンの分泌や働きを抑えるために、ほてりやのぼせ、発汗などの更年期症状に似た副作用が現れることがあります。

(3)分子標的治療薬
がん細胞に特有の分子を標的とした比較的新しいタイプの治療薬で、従来の細胞傷害性抗がん剤のような症状は現れにくい一方、発熱、倦怠感、皮疹(発疹)、アレルギー様の症状、間質性肺炎、血圧上昇、蛋白尿など、分子標的治療薬に特有のさまざまな症状がみられることがあります。

(4)免疫チェックポイント阻害薬
体がもつ免疫のしくみを利用してがん細胞を攻撃する、新しいタイプの治療薬であり、免疫機能に関連する副作用(免疫関連有害事象)が起こることがあります。その症状は多彩ですが、たとえば腸炎(下痢)や肝障害、内分泌障害、筋炎、神経炎、肺炎などがみられることがあります。

副作用の出方や強さは、薬剤の種類、使用量、使用期間、また個人差などによっても大きく変わります。副作用が強く出てしまうと、想定した治療が難しくなったり、中止したりせざるをえないこともあるため、副作用に伴うつらい症状を予防したり、和らげたりすることで、望ましい治療効果を得るための医療(支持医療/サポーティブケア)も、がんの治療に併せて積極的に行われています。副作用について不安や心配なことがあるときには、遠慮なく担当医や看護師、薬剤師などに質問してください。

執筆者渡邊 清高
公開日2023年6月5日
文書番号gw0257

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