抗がん剤から免疫チェックポイント阻害薬まで:がん薬物療法の解説

抗がん剤から免疫チェックポイント阻害薬まで:がん薬物療法の解説

Q.質問
がんと診断された後、担当医から薬物療法で治療することを勧められました。薬物療法と言うと、つまり抗がん剤を使うということでしょうか? どのような薬剤が使われるのか、よくわからず不安です。がんの薬物療法で使われる薬にはどのようなものがあるのでしょうか。
A.答え
現在、がんの薬物療法で用いられる主な治療薬には、おおまかに4つの種類があります。

薬物療法を勧められたものの、どんな薬剤が使われるのか、ご不安ですね。
おそらく担当医がまず伝えたかったことは、がんの主な治療法(手術療法、放射線療法、薬物療法)のうち、手術や放射線ではなく、薬剤を使ってがんの治療を進める薬物療法が最もお勧めできそうです、ということだと思います。具体的な使用薬剤についても、今後必ず説明がありますから、安心してください。

具体的にどのような薬剤が用いられるかは、がんの種類やがん細胞のタイプなど、種々の条件よって異なりますが、現在のがん治療では、主に次の4種類の治療薬が用いられています。

(1)細胞傷害性抗がん剤
昔から用いられてきた、いわゆる「抗がん剤」の総称で、細胞の増殖のしくみに作用してがん細胞の増殖を抑えます。薬剤の成分が化学物質であることから、「化学療法」「化学療法薬」と呼ばれることもあります。このタイプの抗がん剤は、がん細胞だけでなく、特に分裂や増殖のさかんな正常細胞(毛根や腸管、粘膜、骨髄など)にも影響を与えることから、脱毛や吐き気、下痢、口内炎などの副作用が起こります。

(2)ホルモン剤
もともと体内にあるホルモンの影響を受けて増殖するがん(乳がん、子宮体がん、前立腺がんなど)に対して、ホルモンの分泌や働きを抑えることで、がん細胞の増殖を阻止し、進行を抑える目的で使われるお薬です。ほてりやのぼせ、骨密度の低下など、更年期症状に似た副作用がみられることがあります。

(3)分子標的治療薬
がん細胞だけがもつ分子レベルの特徴に対し、その分子に作用して薬効を発揮する比較的新しいタイプの抗がん剤です。がん細胞に特有の分子を攻撃するため、従来の抗がん剤(細胞傷害性抗がん剤)と比較して副作用が少ないというメリットがありますが、一方で、分子標的治療薬に特有の副作用(皮疹やアレルギー様症状など)が現れることがあります。

(4)免疫チェックポイント阻害薬
身体に備わった免疫のしくみを利用してがんを治療する、最も新しいタイプのお薬です。分子標的治療薬の一種に分類されることもあります。細胞傷害性抗がん剤とは異なるしくみでがん細胞の増殖を抑えることから、従来のような副作用は少ない一方で、本剤に特有の副作用(腸炎や内分泌障害など)が現れることがあります。

具体的にどのような薬剤が使われることになるかは、遠慮なく担当医に尋ねて構いません。起こりうる副作用に対してどのような対処ができるかも確認しておくとよいですね。

執筆者渡邊 清高
公開日2023年6月5日
文書番号gw0252

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