妊娠を希望するがん患者へ:妊よう性温存とがん治療の影響

妊娠を希望するがん患者へ:妊よう性温存とがん治療の影響

Q.質問
将来、子どもを持ちたいと考えています。がん治療は、妊娠・出産に影響があるでしょうか。
A.答え
がん治療は妊娠・出産に影響を与えることがあります。治療を始める前に担当医に相談しましょう。

妊娠・出産には卵巣、子宮、精巣といった生殖器が大きな役割を果たしていますが、それらを司る脳下垂体など、妊娠・出産とは関係なさそうな器官も実は「妊よう性(妊娠する力)」に大きくかかわっています。

抗がん剤やホルモン療法で使用するホルモン剤は全身に影響を与えるものであるため、抗がん剤治療やホルモン療法は、女性・男性を問わず、妊よう性に影響を与える可能性があります(たとえば、卵巣や精巣の機能が低下したり、卵子や精子の数が減少したりするなど)。また腹部や骨盤への放射線療法によって、生殖器を含む臓器に影響が現れることがあります。すべての抗がん剤やホルモン剤、放射線療法が妊よう性を低下させるわけではありませんが、治療を受ける前に、将来的に子どもを持ちたい意向を担当医に伝え、ご自身の受ける治療が妊よう性に影響を与えるかどうか確認しましょう。

妊よう性を低下させる可能性のある治療を始めようとする場合、がんの治療を行うことを前提としながら、妊よう性の低下とはどのようなものか、妊娠・出産をするためにはどのような方法があるのか、納得がいくまで担当医と相談することがとても大切になります。パートナーがいれば、パートナーも交えて話し合うことをお勧めします。

がんの治療は日々進歩しています。それと同じように生殖補助医療も進歩しています。がんの治療を開始する前に、精子や卵子を凍結保存したりなど、妊よう性を保つ工夫もさまざまなされるようになっています。担当医と相談のうえ、必要に応じて、生殖医療の専門家である産婦人科医や泌尿器科医とも相談することができます。また、お住まいの自治体によっては、妊よう性温存のための医療について相談窓口を設置していたり、費用の助成制度を設けているところがあります。

全国400か所以上のがん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」でも、妊よう性温存に関する悩みや心配ごとを相談することができます。

◎がんの相談窓口「がん相談支援センター」(国立がん研究センターがん情報サービス)

すべての希望に応えることはまだ難しい側面もありますが、妊娠・出産を望む場合、また、今はまだわからなくても、将来子どもを持ちたいと思ったときに叶えられるよう、妊よう性を保ったうえでの治療を希望する場合には、その旨を担当医に伝え、対応を一緒に考えていきましょう。

執筆者渡邊 清高
公開日2023年6月5日
文書番号gw0264

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