免疫チェックポイント阻害薬とは?:その効果と副作用について
Q.質問
免疫チェックポイント阻害薬という種類のお薬を使ってがんの治療を進めることになりました。これまで一度も聞いたことがなかったので、どんなお薬なのかを知りたいです。抗がん剤とは違うものなのですか。
A.答え
体にもともと備わった免疫のしくみを利用してがんを治療する、新しいタイプのがん治療薬です。
がん細胞は、免疫細胞であるリンパ球(T細胞)が本来もっている、異物を攻撃する力にブレーキをかけることで、T細胞の働きを鈍らせ、自らの増殖を優位にするしくみをもっています。この、免疫にブレーキをかけるしくみを免疫チェックポイント機構と言いますが、このしくみを阻害することで、T細胞にかけられたブレーキを外し、T細胞が本来もっている異物を攻撃する力を発揮させる薬が「免疫チェックポイント阻害薬」です。広義には抗がん剤の一種ですが、作用のメカニズムは他の抗がん剤とはまったく異なるものです。
日本では、2014年に免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが初めて承認され、悪性黒色腫の治療薬として使用されるようになり、以後も新しい免疫チェックポイント阻害薬が次々に登場し、非小細胞肺がんや腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、胃がんなど、さまざまながんの治療薬として用いられるようになりました。
免疫チェックポイント阻害薬による治療は「薬物療法」でもありますが、体に備わった免疫システムを活性化することで治療効果を得る、「免疫療法」と呼ばれる新しいがん治療法のカギとなる薬剤でもあります。
免疫チェックポイント阻害薬は、これまでの抗がん剤とはまったく異なる薬剤であるため、従来のような副作用が少ない反面、特有の副作用を生じることがあります。
免疫チェックポイント阻害薬による特有の副作用は「免疫関連有害事象(irAE)」と呼ばれ、全身性の症状が現れやすく、皮膚炎や内分泌障害、筋炎、肺炎、肝機能障害など、非常に多彩です。治療開始から1か月以内に症状が出ることが多いものの、治療後時間が経ってから現れてくることもあります。
治療を受けるときは、担当医や看護師、薬剤師などからの説明をよく聞き、体調の変化に注意を払いながら、副作用にもしっかり対処して安全に治療を進めていきましょう。
執筆者 | 渡邊 清高 |
公開日 | 2023年6月5日 |
文書番号 | gw0256 |
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