がん治療の副作用とアピアランスケア:脱毛や外見の変化への対処法
Q.質問
抗がん剤治療の副作用として、皮膚障害が起こったり、脱毛したりすることがあると聞きました。接客業をしているため、外見の変化が不安です。対処法はあるのでしょうか。
A.答え
外見の変化に対しては、「アピアランスケア」があります。アピアランスケアでは、ウィッグや皮膚の変化に対応した化粧など、さまざまなアドバイスを受けることができます。
抗がん剤の治療で生じる外見の変化は、主に脱毛、皮膚障害、爪の変形・変色です。これらの多くは、細胞傷害性抗がん剤による治療を行っているときに生じます。細胞傷害性抗がん剤は、がん細胞だけでなく、細胞の分裂・増殖が盛んな毛(毛髪、眉毛やまつ毛、体毛)や皮膚、爪といった部分に影響することがあります。そのため、脱毛や皮膚の角化、爪の変形や変色などが起こります。ただし、外見がどのように変化するかは、使用している抗がん剤の種類や量、期間によって異なります。また、変化の現れ方には個人差もあります。
外見の変化は、治療開始後すぐに現れるわけではなく、開始から少し時間を置いて現れてきます。変化が現れてくる時期はある程度予測できますので、ご自分が使用する抗がん剤によってどのような外見の変化が起こりうるか、またその時期がいつ頃であるかについて、あらかじめ担当医に確認しておくとよいでしょう。こうしたことがわかっていれば、事前に対策を考えることができます。なお、こうした外見の変化は、治療が終われば落ち着き、多くの場合、徐々に元に戻っていきます。
外見の変化は、ご本人やご家族にとって時に大変つらいことです。かつては、がん治療における外見の変化は我慢しなければならないものでしたが、現在は、がんの治療と同時に適切なケアが行われるようになってきました。
がん治療に伴う外見の変化に対するケアのことを「アピアランスケア」といいます。たとえば、全国に400か所以上設置されているがん診療連携拠点病院の多くでは、アピアランスケアに関連する相談を「がん相談支援センター」で対応していたり、アピアランスケアを専門とする部門(アピアランスケア外来、アピアランスケアセンターなど)が設置されていたりします。頭髪の脱毛に対処するためのウィッグ(医療用かつら)や皮膚の変化に対応した化粧品、爪の変形・変色に対応したマニキュアの使用方法など、外見の変化に対するさまざまなアドバイスを受けることができます。
また、がん治療の状況を踏まえて、関連する診療科(皮膚科、形成外科、美容外科など)やその他の専門家からアピアランスケアを受けられるところもあります。
がんに関するあらゆる相談を受け付けている「がん相談支援センター」では、ご本人だけでなく、ご家族やご友人など、どなたでも疑問や悩み、心配ごとを相談することができ、もちろん外見に関する相談も可能です。
◎がんの相談窓口「がん相談支援センター」(国立がん研究センターがん情報サービス)
また、国立がん研究センター中央病院は、「生活の工夫カード」を作成し、ウェブサイト上で公開しています。これは、国立がん研究センター中央病院の外来に通院している患者さん自身が生活上で困ったことに対して、どのような工夫をして対処しているのか、その対処法を紹介したものです。外見の変化だけではなく、さまざまなことに対する工夫がまとめられています。
◎生活の工夫カード(国立がん研究センター中央病院看護部)
外見に関して、ご本人やご家族の希望を完全に叶えることはまだ難しい部分もありますが、さまざまな対処法がありますので、不安や心配なことがあれば、遠慮せずに、まずは担当医や看護師に尋ねてみましょう。アピアランスケアについての情報を得ることができると思います。
執筆者 | 渡邊 清高 |
公開日 | 2023年6月5日 |
文書番号 | gw0261 |
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