がんの薬物療法における副作用の管理:支持医療(サポーティブケア)の進歩とその役割
Q.質問
がんと診断され、頭の中が真っ白になりました。と同時に、抗がん剤治療はつらく過酷なものというイメージが湧いてきて、この先治療を進めることが怖くなってしまいました。
A.答え
がんの薬物療法を含め、治療に伴う副作用を抑える医療が、大きく進歩しています。
確かに、がんという手強い病気に使うお薬には、強力な作用をもつものが多くあります。つらい副作用のイメージが強い方も多いと思いますが、そのイメージは、必ずしも現在のがん医療を正しく反映したものではないかもしれません。つまり、現在のがん治療では、つらい副作用に対し、「ただひたすら耐える」必要はないということを、ぜひ知ってほしいと思います。
がん医療において近年飛躍的に進歩した領域に、「支持医療(サポーティブケア)」があります。支持医療とは、がん治療に伴って起こる副作用を予防したり、副作用を早期に発見して積極的に抑えていく医療の総称です。
たとえば、抗がん剤(細胞傷害性抗がん剤)のつらい副作用としてよく知られている「吐き気」は、かつてほとんど対処法がありませんでした。しかし、強い吐き気が続くと食事がとれず、体力も落ちて、結果的に、想定したがんの治療を続けられないことが少なからずありました。
こうしたことから、手術療法・放射線療法・薬物療法などのがんに対する治療をしっかりやり遂げるためには、副作用の十分なコントロールが重要であることが認識されるようになり、副作用を軽減するための薬剤の開発や方法の検討がさかんに行われるようになりました。
たとえば吐き気に対して、現在では複数の効果的な制吐薬(吐き気止め)が開発され、抗がん剤の副作用として起こる吐き気を大幅に抑えることができるようになり、治療中でも普段と近い生活が送れたり、効果が期待できる十分な強度のがん治療を継続できるようになってきています。もちろん吐き気だけでなく、脱毛や骨髄抑制(白血球などの減少)など、抗がん剤の使用でしばしばみられる他の副作用に対する対策も積極的に行われています。
治療前で不安が大きい時期と思いますが、がん治療と併せて実施される支持医療についても、心配な点や疑問があれば担当医や看護師、薬剤師に遠慮なく尋ねましょう。また、実際に治療が始まってからは、自分にしかわからない症状(吐き気やだるさ、便秘など)を我慢しないで、ぜひ医療者に伝えてください。必要な治療と、許容できる副作用との折り合いをつけながら、治療を進めていけるとよいと思います。
執筆者 | 渡邊 清高 |
公開日 | 2023年6月5日 |
文書番号 | gw0258 |
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